伊藤詩織さん「Black Box」読んだ。記憶から抹殺したいような壮絶な体験を、第三者にもわかりやすく整然と記すだけでなく、現在の司法や捜査の仕組みへの問題提起、レイプ被害者救済に関する海外の事例や具体的な提言まで踏み込んでいて、ジャーナリストであることの挟持を感じた。
2人の間に合意があったかどうか、山口氏の行為が犯罪だったか、私には判断できない。けど、この本を読めば、詩織さんが山口氏を糾弾するのが目的ではなく、性犯罪の撲滅と、被害者救済の仕組みを切望しているのがは明白だ。詩織さんに対して、山口氏は、月刊Hanadaや動画で反論をしていたけど、客観的証拠に乏しい理屈で自分の正当性をただ主張しているだけ。最後まで見るに耐えなかった。どちらの言い分が正しいかはさておき、ジャーナリストとしては、詩織さんに軍配があがると判断せざるを得ない。(ちなみに、動画を見て、自分が持った超個人的感想は、控えめに言ってもクズの極み)
詩織さんの事件について話す時、時折女性でさえも、美人局・ハニートラップについての可能性について話すことに驚愕するけど(詩織さんが、というより一般的な話をしているんだと思うけど)、自分は終始、自分の家族にそういったことがおきたら、って考えながら読んでいた。そういった事態に陥った時、この本を読む前なら、きっと目の前の女性に何もできなかっただろう。この本を読んだからって、冷静に、適切に対処できるとも思わない。けど、読む前より、少しだけ寄り添うことはできると思う。
詩織さん、山口氏、どちらかの言い分が正しいかの言い合いには辟易する。私はそんな不毛なやり取りも詮索もするつもりはない。けど、そういった性被害に遭われてしまった方がどうしたら救われるのか、身の回りでそういったことが起こってしまったら、どう寄り添ってあげればいいのか、そういうことを考えていたい。